■■■その3. 「特定調停」 は難しいか?それとも簡単か? ■■■
(注:これは2003年に書いた記事です。現在でも通用します。)
「特定調停」と書いて、「とくていちょうてい」と読みます。 (特別調停とか特定調整などと間違えて呼ぶ方が非常に多いですが、しっかり覚えて くださいね)
この「特定調停」は、2000年の2月から始まった比較的新しい制度で、自己破産せず借金 を返済していきたいという気持ちを持った多重債務者を中心に広く利用されています。 特に今年に入ってからは、週刊誌や新刊本などで特定調停のことが大きくクローズアップ されることが増えてきたためか、全国どこの簡易裁判所でも、特定調停申立の件数が爆発的に 増えているそうです。 実際、特定調停は費用も安く、利用価値もバツグンにあります。
多重債務者が特定調停を申立てると、だいたい次のような効果が期待できます。
- 利息制限法に引きなおされて、借金(元金)がその分だけ減る。 (私の著書の「体験記」にあるとおり。取引年月が長いと、かなり劇的に減ることもある。)
- 将来利息0%で、3−4年の分割払いにしてもらうことが可能である。消費者金融やカード会社が相手の場合、かなりの確率でこうなる。 したがって、今まで毎月高い利息を払っていつまでも元金が減らなかったのと比べて、毎月の返済金額も減るし、返済した分だけ元金も減るので、数年後には晴れて借金を完済、借りたカネは返したことになる。債権者に極力損をさせずに、自分も再起できるわけだ。
- 特定調停を申し立ててから調停が成立するまでの間(平均すると2−3ヶ月間)、返済を暫定的にストップしても、債権者からの取立てが来ないので、金銭的にも精神的にも非常に楽になり、今後の生活立て直しのために自分を見つめ直すことができる。
- 以上のようなメリットがあります。
一方、デメリットは、以下の通り、さほど多くありません。
- 信用情報機関に事故情報が5年間ほど残る。 このため、約5年間ほどは、新しくカードを作ることや住宅ローンを組むことができにくくなる。 (但しこれはメリットとして捉えるべき。5年間というリハビリ期間のうちに、借金体質を断ち切って、貯金体質をつくり、家を買いたければ頭金を貯めればよい。5年後には事故情報はだいたい消える。)
- 調停で決まったことは裁判の判決と同等の強制力があるので、万一、調停で決まった通りに返済できなくなると、強制執行される可能性がある。
- 特定調停でも解決しないような重度の多重債務者は、調停が不成立になるか、あるいはムリして成立させてもかえって苦しい思いをすることになる。
次に、特定調停を選択する際の注意点(というか、私が常々感じていること)を挙げてみましょう。
- 特定調停を過信するな! どんな多重債務者でも特定調停で救済できるわけではない。 たとえば、利息制限法に引き直して元金がその分減っても、その総額が3−4年の分割で返せないほどの大きな金額だったら、特定調停だけで再起を図るのは難しい。 この場合、法的な債務整理方法で残された選択肢は、「個人再生手続き」か「自己破産」 しかなってくる。(注:法的整理にこだわらなければ、まだあと何通りか選択肢が出てくるが、ややマニアックな方法なのでここでは省略。) いずれにしても、特定調停だけにしがみつくのは危険。広く選択肢を検討するところから始めよう。
- 特定調停をナメるな! 確かに訴訟や個人再生などと比べればはるかに簡単に手続きでき、弁護士さんや司法書士さんに頼らず自分ひとりで十分できるが、あまりにも予備知識のないまま簡易裁判所へ行くのは良くない。最低限、特定調停関連の本を読むか、専門家に相談するか、猫次郎塾 や他の専門家のHPなどで情報収集して、予備知識を蓄えてから行ったほうがいい。
- 過剰に心配するな!神経質になるな! 案ずるより生むが易し。 ある程度予備知識を身に付けて、自分には特定調停が向いていると判断したら、あれこれ細かいことは心配し過ぎずに、早めに行動に移ることも大切。 でないと、いつまでたっても利息の支払いに追われ、借金(元金)がいつまでたっても減らず、何も改善されない。
- 変な情報に振り回されるな! たとえば、「過去の取引経過を証明する領収書などが残っていないと、利息制限法の引き直しは絶対にできない」とか、「弁護士を立てないと特定調停できない」とか、「調停が不調になるとすぐに強制執行される」とか、「調停するとブラックリストに載って一生社会復帰できない」とかいう話を聞くことがあるが、これらはすべてデマ情報。 振り回されないように。
- ちょっとしたハードルがあることを知ろう。 「特定調停」はあくまで裁判所を使った「話し合い」なので、かならずしも「裁判」のようにきちっと利息制限法を主張できるとは限らない。かなり妥協させられることもある。 また分割払いや将来利息カットについても、法で義務付けられているわけではないので、100%うまくいくとは限らない。また、債権者から取引経過の明細を出し渋られることもよくある。
このように、いくつかハードルがあるのだが、どれも上手い対処法はあるので、専門家に相談すればさほど怖くありません。
特定調停は決して簡単ではありませんが、特別難しくもありません。 利用価値は大変高いですが、決して万能ではありません。 自力でじゅうぶんできますが、専門家に相談するか専門書を読むかして、自分が特定調停に 合っているかどうかや、実務上の流れや注意点などを、よく吟味しておく必要があるでしょう。
(メルマガ2003年4月より抜粋)
■■その4. 弁護士さんや認定司法書士さんに、代理人になってもらう=任意整理■■
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特定調停のことばかり書きましたが、本当は、もっと確実な方法があります。
それは、弁護士さんや認定司法書士さんに代理人になってもらって、あなたの代わりに、貸金業者と利息制限法引き直しの交渉をしてもらうことです。 これを通常、
任意整理 (にんいせいり)と呼びます。
任意整理に興味のある方は、一度、弁護士事務所か司法書士事務所に相談に行ってみてください。相談に行くだけでも構いません。その場で着手金や委任契約書へのサインをせかされても、応じる必要はありません。相談は相談、契約は契約と区別するのがあなたのためです。良心的な先生だったらそうやって考える時間を与えてくれます。良心的な先生じゃないとその場で感じたら、ハンコを押さずに時間分の相談料金だけを払って帰ってくればいいのです。とにかく相談だけは一度行ってみましょう。任意整理で減額可能かどうか、任意整理で解決可能かどうかを知るために。
弁護士の相談料金は、ふつう、30分あたり5,250円程度です。 但し弁護士報酬は自由化されているので、相談無料のところもあれば、1回3万円の相談料金を取る弁護士もいます。 これは安い高いだけでは良し悪しを判断できません。大事なのは中身です。一見高そうにみえても、確実に依頼人の利益になってくれるなら、あなたにとって経済的にも精神的にもプラスになるはずです。逆に、相談無料で整理の報酬も格安だけど、手抜きやミスリードばかりするような弁護士には、不安で依頼できないでしょう?
司法書士も、認定司法書士と呼ばれる司法書士に限り、あなたの代理人になれる権限があります。但しその代理権は、簡易裁判所の民事で扱う程度のものに限られます。(目安としては、問題となっている金額が、140万円を超えないこと。これにはいろいろな解釈がありますが、債務総額で140万という人もいれば、債務総額がいくらあろうと借入先1軒あたりの経済的利益が140万を超してなければOKという人もいます。後者を基準にすると、たとえば残債1000万円の商工ローンでも、利息制限法に引き直して計算上の債務が140万以下になる場合は代理人として受任できるということになりますね。ただ、これはどっちが正しいのか私にはわかりません。弁護士さんに聞いても司法書士さんに聞いても、意見がバラバラ過ぎてわからないのです。まあ、相談してみて受任してくれればそれでいいんじゃないでしょうか。)
任意整理のメリットは、
1.利息制限法に引き直される。(但しもちろん、利息制限法を上回る利率で借りていた場合のみ。) まあこれは、特定調停でも同じ効果が得られますね。
2.過払いが発生していれば、過払い金の返還請求交渉もしてくれる。 これは特定調停ではなかなか得られないメリットです。特定調停の場合、過払いが発生していたら、別途、過払い金返還請求訴訟を起こさなければ、なかなか確実には取り返せません。
3.あなたのところへ、取立ての電話や訪問が全く来ない。(代理人がカベになってくれる) まあこれも、特定調停でも同様の効果が得られますね。
4.引き直しても借金が残った場合、その残った借金を、将来利息ゼロの長期分割払いにしてくれるよう、交渉してくれる。(分割の目安はだいたい3−4年。これも特定調停とほぼ同じですね)
5.代理人になってくれるから、あなたは何もしなくていい。会社を休んで裁判所へ行く必要もない。(これが任意整理と特定調停の決定的な違い!)
6.その道のプロに代理人になってもらう分、特定調停に比べて、確実性が高い。
7.守秘義務。近隣にはもちろんのこと、職場や身内にも知られずに整理できる可能性が高い。(特定調停でも知られずにできるが、書類送達先を現住所と違う場所に指定するなど、ちょっとしたコツがいる。)
いっぽう、デメリットは、
1.当たり前だが、特定調停よりも費用が高い。弁護士の場合で、サラ金1件あたり、4万円前後の基本料金と、圧縮された金額の5%前後の報酬が加わることが多い。7件も8件も借りている多重債務者だと、総額で50万円以上の報酬を払わなくてはならないことも多い。但しこれは分割払い可のところが多い。(それでも最低限の着手金は要る)
また、過払い金を取り戻してもらう場合、成功報酬として、取れた過払い金の20%前後を請求されることが多い。(着手金や手間などによって前後するようです・・・)
ちなみに、認定司法書士だと、これより幾分安い傾向がある。
2.代理人として全てやってもらえるので、実感が沸かない。 ほとんど労力をかけず精神的苦痛も伴わないで整理できてしまうので、ともすれば、多重債務に陥ってしまった自分を反省することもせず、近い将来、また同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。 その点においては、多少苦労が伴うが、特定調停などのほうがおすすめである。
3.地域差。 大都市では弁護士も司法書士もいっぱいいて、いくらでも選択することができるが、法律専門職は過疎過密化が激しい。過疎地では、町に一人も弁護士がいないところも多い。司法書士が数名いても、登記ばっかりでクレサラ債務整理の経験のある司法書士がいないことも多い。 東京など遠方の弁護士にお願いするという手もあるにはあるが、遠方のためどうしてもコミュニケーション不足で不安が残るし、また費用も割高になる。 こういう場合、やはり、任意整理はあきらめて、自分で勉強して、特定調停などで解決を図ったほうが良いという結論になると思う。
あとは、あなたの「好み」や「適性」や「置かれている環境」で決めれば良いと思います。
サラリーマンで休みがどうしても取れない場合は任意整理がいいでしょう。
過疎地に住む自営業者で、時間はいくらでもあるけどカネがなく近くに法律家もいないような場合は、任意整理ではなく特定調停のほうがいいでしょう。
尚、人によっては、任意整理も特定調停もどちらも向かない場合があります。
それは、特定調停や任意整理で圧縮しても、返しきれない場合です。
たとえば、利息制限法に引き直しても借金が総額500万円以上はあり、月収はパートで15万円しか入らなくて、返済どころか生活するだけでも一杯一杯・・・というような場合、いくら任意整理しても特定調停しても返せないのは明らかですから、別の方法を考える必要があります。 なに、まだまだ選択肢は豊富にありますから心配は無用です。 自己破産で一気にチャラにしても良し、個人再生手続きで5分の1ぐらいに減らせないかどうか弁護士に相談してみるもよし、あるいはその他の裏ワザ(このホームページを隅々まで読めばおぼろげながらわかってくるはず)を駆使するもよし。
柔軟に、柔軟に考えてみてください。
(2008年5月5日 書き下ろし)
■■その5. 利息制限法でどのくらい借金が減るか? 大まかな目安■■■
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そのうち暇を見つけて、計算表(by Excel)をアップしたいと思いますが、
ごく大雑把にいって、年数が長ければ長いほど、利率が高ければ高いほど、借金は、激減します。利息制限法引き直しで。
たとえば、
◆ 「年利29.2%で、50万円の枠で、リボ払いのキャッシングで、かれこれ10年間、絶え間なく、借りたり返したりを繰り返していた。今も50万円借金が残っている。」
→ ほぼ間違いなく、引き直しで借金ゼロになります。わかりやすくいえば、利息制限法(18%)よりも、毎年11.2%の余計に払いすぎているのですから、11.2%の10年分ということは、ものすごく単純に計算しても、112%の払い過ぎになりますよね?それどころか、実際には元本充当計算といって、もっと大幅に減る計算になりますから、たとえ現在50万円の借金が残っていても、過払いの金額が軽く60万、いや下手すると100万以上発生していても不思議じゃないですから、借金50万から過払い60〜100万を引けば、少なくとも借金ゼロ、いやゼロどころか、10万〜50万程度の過払い金が返還されてくる可能性もじゅうぶんあります。よって、こういう場合、費用をけちって特定調停などで片付けようとせず、できれば弁護士か認定司法書士に任意整理をお願いしたほうが、おそらくあなたの利益につながるでしょう。
◆ 「年利20%で、5年間、キャッシングの借りたり返したりを繰り返していた。今も枠いっぱいの50万円の借金が残っている。」
→ 残念ながら、ちょっとしか減りません。 年利18%までは法律で認められていますから、その差は年2%。 細かいことは省略してわかりやすく言えば、2%x5年分し過払いが発生していませんから、残債の50万円からそれを引いても、たぶん45万円以上は残るでしょう。
◆ 「年利29.2%で、1年前から借りはじめた。枠は50万。残債も50万。」
→ 残念ながら、1年分しか減らないので、44万程度にしか減らないでしょう。
◆ 「よく憶えていないが、15年ほど前に40%の利率で100万ほど借りて、8年前に一度完済して、以後しばらくブランク空いて、6年前にまた100万円借りて、このときは年利23%で、2年前に完済して、また最近100万円借りて、現在は18%だ。」
→ ブランクが空いていても、取引開始初期に遡って計算・請求できます。ブランクが空いていて、金利にも変動があるため、計算がやや難しくなりますが、一連の経過を見た限りでは、100万円の残債がゼロになる可能性も少なくありません。もしかしてもしかしたら、過払い金返還請求権も少し発生しているかもしれません。こういう場合、借入先に取引経過の開示請求をして、全部開示してくれるまで下手な妥協はしないで、訴訟も辞さない覚悟で臨むといいでしょう。
◆ 「ヤミ金から、10日で2割の利息で、1ヶ月前に100万円借りた。この30日間で60万の利息を払っている。ヤミ金からは100万円の元金を請求されている」
→ この場合、利息制限法の話には向きません。利息制限法引き直しの話は忘れてください。もっと劇的なやり方があります。
この場合、出資法違反ですから(出資法5条では、業者の場合年29.2%まで、業者でない場合でも年109.5%までと定めている。これ以上の金利は「無効」になる。実際に取ってなくても、取ろうとしただけで無効になる!)、「約束した10日で2割の利息は無効だ!」と主張してください。今まで払った60万の利息が無効だとすると、それは元金として充当されますので、「100万円借りた」−「60万円返した」=「あと40万だけ返せばいい」という計算になります。
このように、ヤミ金のような出資法違反の高利の場合、利息制限法引き直しよりもずっと計算が単純なのです。
付け加えるなら、民法708条不法原因給付に照らし合わせて考えると、残りの40万円も返さなくていいという解釈になります。まあこれは難しくなるので別項であらためて解説したいと思います。
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■■ その6. 過払い金返還請求は、お早めに。 ■■ |
もし、あなたが20%台後半以上の高い金利で7年も8年も10年も借りたり返したりを続けているのなら、利息制限法引き直しで「借金ゼロ」どころか「過払い」が発生している可能性があるので、できるだけ早く、情報を集めて、行動を起こすべきでしょう。
なぜ早めに行動したほうがいいかというと、一般的な理由のほかに、次のような特殊な理由もあるからです。
1.過払い金返還請求にも「時効」がある − 判例では、完済してから10年が時効とみなされているようです。(いや、これは法律家の先生によって見解が違うようです。ある弁護士さんからは完済後10年と聞きましたし、別の弁護士さんからは5年と聞きました。また、時効は関係ない、請求するのは自由だという先生もいます・・・) まあ、単に時効で判断するだけでなく、過払い金返還請求には、取引経過の開示請求も伴わなければならない場合も多いので(証拠書類を借主が紛失していることが多いため)、開示請求のことも考えると、時間が経過すればするほど不利になることは言うまでもありません。
2.貸金業者の倒産 − 2007年にはクレディアが民事再生法を、2008年にはアエル(旧日立信販)が民事再生法を申請しました。上限金利が下がって、これからますます、貸金業者の倒産が増えることが予想されます。過払い金を請求すると、あなたが債権者、貸金業者が債務者というように立場が逆転しますが、倒産したら回収できないのは立場が変わっても同じです。
3.鉄は熱いうちに打て − さいわい、2006-2008年現在は、大手消費者金融の多くは、過払い金返還のための引当金を積んでいるところが多く、また2006年に起きたシティズ最高裁判決やアイフルの重い行政処分なども相まって、比較的素直に、取引経過の開示や過払い金返還に応じてくれているようです。(複数の弁護士、司法書士さんからそういう生の声を頂きました) しかし、上記2に書いたように、貸金業者の経営環境が非常に厳しいことは確かで、中にはここ1年ほど、過払い金の返還には応じるが、その支払方法を「苦しいから分割払いにしてほしい」と、もっとひどい場合はのらりくらりとかわされて払ってもらえないという話もチラホラ聞くようになりました。 まったく、債権者と債務者の立場逆転ですね。
尚、過払いが発生している場合は、弁護士さんも認定司法書士さんも、比較的安い着手金で受任してくれる傾向があります。(取れた過払い金で報酬がキチンともらえる見込みが高いから) 手元にお金がなくても、遠慮せず、相談に行ってみるといいでしょう。
(2008年5月7日 書き下ろし)
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