不良債権処理と聞いて、現場でどのようなことをしているのか、ピンとくる方がどれだけいるでしょうか?
新聞記事より抜粋。 『日本経済は、バブル崩壊後依然として低迷を続けている。これを打破するためには財政政策、金融政策等のマクロ経済対策だけではなく、ミクロ面でも、不良債権処理の加速化による金融不安の解消と同時に、借り手側である企業の構造改革を促し、金融再生・産業再生の一体となった取り組みを行うことが求められる。』
なーんて書くと、いかにももっともらしく聞こえますが、不良債権って一体何なの?処理って一体何なの?と聞かれて、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか?
今回はその不良債権処理について、子供でもわかるように、噛み砕いて解説していきたいと思います。
◆ そもそも不良債権とは?
不良債権とは読んで字のごとく、不良な債権のことです。
「債権」とは何かというと、「貸したお金や物などを、返してもらう権利」のことをいいます。貸付金も債権。売掛金も債権。まだもらっていない離婚の慰謝料も債権。友人に貸したビデオも債権です。
逆に、返さなければならない義務のことを「債務」といいます。
人から借りたお金も債務。金融機関からの借入金も債務。飲み屋のツケも債務。連帯保証人として負った債務も債務です。
「不良な債権」とは、要するに、支払いが滞って、なかなか回収できない状態にある債権のことです。貸したお金が何年も返ってこないで、今後も回収の目処が立たなければ、それはもう立派な不良債権です。
しかし、多少遅れながらでもキチンと返してくれているならば、これは不良債権として分類すべきかどうか、判断の分かれるところです。
◆ 不良債権の処理とは?
回収困難な不良債権をいつまでも粘って回収しようとすると、経費のほうがかえって高くつく場合があります。回収に手間取る人件費や通信費、雑費、税金 など・・・。これは貸し手側にとって大きなロスとなります。
そこで、時と場合によっては、「損してでも、この不良債権を切り捨てよう」と決断されることがあります。略して「損切り」です。
「不良債権処理」とは、この「損切り」と、ほぼ同義語だと思って間違いないでしょう。
なお、「処理」と「回収」とでは意味が異なります。 「債権回収」とは、貸したお金や契約上発生している金利などの全額回収を狙う行為のことをいいますが、「(不良)債権処理」は、回収じゃなくて、回収できなくても何でもいいからとにかく処理しよう(=帳簿から消し去ろう)というものです。両者は似て非なるものです。
◆ 不良債権処理のメリット(貸し手側にとっての)
利益のあがっている金融機関ならば、不良債権を損覚悟で切り捨て、それを貸倒金として償却すれば、節税効果が期待できますし、前記のとおり、余計なコストを削減することもできますので、かならずしも大きく損するとは限りません。むしろメリットのほうが大きい場合もあります。
◆ 不良債権処理のメリット (借り手側にとっての)
不良債権処理は借り手側にとっては、「不良債務を処理してもらう」ことにほかなりません。誤解を恐れずに言えば、わざわざ返済しなくても、わざわざ自分から自己破産などをしなくても、債権者が勝手に回収を諦めて処理してくれるのです。
いいですか?「処理」ですよ。「全額回収」ではないんですよ。 処理して終わりにしようとしてくれているんです。
このメリットは計り知れません。
事業者ならば、返しきれなかった借金の重荷から開放されて、その分、前向きな事業再建にエネルギーを費やすことができるでしょう。これが冒頭で書いた堅苦しい文章 「借り手側である企業の構造改革を促す」 につながります。
◆ 金融機関はどうやって不良債権処理しているのか?
まず、不良債権処理であるかどうかの分類をハッキリさせることから始めます。 担保を売却しても、保証人に請求しても、何をやっても回収できない債権であることを証明する必要があります。これを証明できないようでは、金融庁にも国税にも「こんなものは不良債権処理として認めん。もっと頑張って回収しなさい」 と言われるのがオチでしょう。だから金融機関としては、債権回収のための一連の努力をして、その痕跡を残さなければなりません。 督促状を送り、内容証明を送り、保証人がいれば保証人にも請求し、担保があれば担保を競売などにかけて処分し、そこまでやっても全額回収できませんでしたから不良債権として処理することを認めてください、と、そこまでやるのが基本だと思っていいでしょう。
そこまでやったら、次はいよいよ「処理」の段階です。 民間金融機関では(not 政府系金融機関)、不良債権の処理方法は、まずほとんどが 「サービサーへの債権譲渡」のことを指します。
債権譲渡したら、金融機関はもうそれで処理が終わり、別れの挨拶に「債権譲渡通知」を送って、あとはもう請求も何もしなくなります。その次は、債権者がサービサーに移りますので、サービサーから請求が来ることになります。
◆ サービサーとは何か?
サービサーとは「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法)に基づき、法務大臣より許可を受けた、債権回収および買取など、債権管理に必要なサービスを総合的に提供する株式会社です。 2005年4月現在、サービサーは全国に約90社ほどあります。
なお、サービサー業務は法務大臣が認可したサービサーしかできませんので、昔からよくシロウトさんたちの間で言われている「不良債権化したらヤクザに債権譲渡されるから危険だよ!」というような心配は全くありません。 仮にも銀行や一部上場クラスのノンバンクなどが、ヤクザまがいのところに債権譲渡したりしたら、それだけで民事上も刑事上も大問題に発展することは、 ちょっと考えれば誰でもわかることでしょう?
◆ サービサーに譲渡されると借金がなくなる? or激減する?
そうとは限りません。ときどき 「1億円の不良債権が、サービサーに移れば100万円ポッキリで終わる。サービサーは簿価の1%で買い取っているのだ!!」 などと書かれた書物を見かけますが、これには真実も含まれますが、くれぐれも鵜呑みにしないでください。そう甘くありません。
確かに、回収不能な不良債権を定価のまま買い取るようなお人好しの業者はいないでしょう。いくら回収できるかわからないのですから、常識的に考えれば二束三文に買い叩くのが普通です。実際、少し前までは、サービサーの不良債権買取価格の相場は「簿価の5%前後」(例:100万円の不良債権を5万円で買い取る)と言われていました。
しかし近年は、サービサーの会社数が急増しており、買取も競争劇化しつつあります。ちょうど、オークションの入札者が増えてくるのと同じように・・・。
また、サービサー法が施行されて5年の歳月が過ぎ、不良債権処理の手法も確立されるにつれて、不良債権の買い取り価格も「適正化(?)」されつつあります。 このため、買い取り価格は年々ジリジリ上がってきていると言われています。(ちなみにこの買取金額は、譲渡人である金融機関との間で秘密保持契約が結ばれていますので、絶対に教えてくれません。自分で推測するしかありません。)
また、いくらサービサーが安く債権を買っていようと、債権譲渡を受けた以上、債務者に対しては、もともとの債権の「全額」を請求する権利があります。それが債権というものです。 いくら安く譲渡されようが、法的には関係ないのです。譲渡前の全額を請求していいのです。
ですから、サービサーから債務者への最初のアプローチは、内容証明で丁寧に、「債権の全額」と「法的に認められた遅延損害金」とを、一括で請求してくるでしょう。そう、一括請求です。一般のシロウトさんが、債権回収会社から一括請求通知の内容証明を受け取ったら、さぞかしビックリすることでしょう?
安く値切る交渉は、ここからはじまるのです。
決して楽ではありません。独特のノウハウがいります。しかし、うまく交渉すれば、100万円の債務を10万円の一括払いにまけてもらうことも夢ではありません。(うまく交渉すればです。甘くはありませんよ。) 中には1億円の債務を100万円にまけてもらった人もいます。(簿価の1%!) なにしろ相手は、債権を安く買い叩いてることには間違いないでしょうから。
◆ 債務者(借主)の心がまえ(1)
不良債権処理させてサービサーで安く解決することを望むなら、まず、「不良債権」にならなければ何も始まりません(笑)。
そう。あなた自身が、「不良な債務者」にならなければならないのです。
不良な債務者とは、まともに返済しない債務者のことを指します。
そう。契約どおりの返済をしてはいけないのです。
担保も失う覚悟で臨まなければなりません。
「お願いです!担保に入れた自宅だけは競売しないでください!」
「保証人にだけは請求しないでください!」
「信用低下は困ります。ブラックリストには載せないでください!」
などと言っているうちは、担保と保証人と信用を守るために返済をせざるを得ませんから、必然的に不良債権とはなりにくいでしょう。もちろん減額もされないでしょう。
このように、不良債権処理には、痛みが伴います。
しかし、私のHPやメルマガを定期購読されている賢明な読者の皆さんは既におわかりでしょうが、決してそれは、致命的な痛みではありません。
痛みの後に辿り着く先が見えれば、じゅうぶん耐えられる程度の痛さです。
◆ 債務者(借主)の心がまえ(2)
あとは、その痛みに耐えてまで不良債権(債務)処理を促進させる価値があるかどうかを判断するために、ぜひ一度、担保物件の「ほんとうの価値」 (実勢価格)を調べたり、不良債権処理した後の事業再生の見込みを冷静に分析したり、スムーズに不良債権化されるかどうか(=弱い立場の連帯保証人や差押さえられたら絶対困る資産がないか?等)を分析したりしながら、自分が返済をストップしたら金融機関はどこを突いてくるか?あなたはそれに耐えられるか?耐えるだけの価値は本当にあるか? などをじっくりシミュレーションしてみましょう。
資産隠しなど、法に触れる行為をしてはいけません。する必要もありません。
堂々と開き直ることこそが、不良債権処理を加速化してもらうことの最大のコツです。
逆に、ここまで読んで、「不良債権処理されるのなんて絶対に嫌だ。借りたものはなにがなんでも返すべきだ!」と感じられた方は、自分の債務が不良債権にならないように、一生懸命返してください。 どちらを選ぶかはあなた次第です。
ただ、昨今は国をあげての不良債権処理促進キャンペーン期間中ですので(そのために時限立法としてサービサー法ができた)、担保価値が下落した不動産に縛られている事業主の方などは、担保価値を大幅に上回る返済不能な借金に囚われず前向きに仕事するためにも、この不良債権処理加速化の流れに乗じて、勇気を出して返済ストップするのもひとつの立派な選択肢だと思います。経営者は時として、非常識と罵られるようなことをしなければならない場面もあります。 じっくり検討してみて下さい。
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