零細企業経営者はバカばっかりである。
吉田猫次郎 2006年2月1日
(書き下ろし)
小さな会社の経営者が本気で再生しようとしたら、表題のとおり、「自分はバカである!」 と自覚するこから始めたほうが良いと思います。

バカといっても、必ずしも社長さん個人がバカというわけではありません。私が言いたいのは、経営者個人がどうのこうのと言うよりも、「組織として」、あるいは「経営陣として」、大きな会社よりもだいぶ劣っているということです。 生き物に例えれば、大企業はニンゲンのような頭脳と手足が独立した高度な生物で、零細企業は頭と手足がほとんど一体化しているタコのようなものといえるかもしれません。(ちょっと例えが悪いかな?)

もう少し具体的に言うと、大企業の経営者は、一人であまり考え込まなくても、経営「陣」として、優秀なブレーン達と一緒に問題解決にあたることができます。財務に強い役員と営業に強い役員と法務に強い顧問が一緒になって、ひとつの経営陣として、大組織の頭脳として指揮することができます。 複数の優秀な頭が一体化していますから、アンテナの感度もビンビンです。どんな問題に直面していても、あらゆる方面から解決のための情報が入ってきます。

これに対して、組織が小さくなればなるほど、経営者はワンマンプレーを余儀なくされます。一人で何役もこなさなければなりません。 技術屋さん出身の社長さんでも、苦手な営業のことや財務のことなどを考えなければなりません。困ったことが起きても、優秀なブレーン達と一緒に解決に当たることなんてできません。周りにブレーンがいないから、情報も自分で率先して収集しなければ入ってきません。そういう努力をしなければどんどん取り残されます。 しかし、いくら努力しても、やれることには限界があります。 厳しいですが、これが現実です。

両者の能力の差は歴然としています。

自由競争の中で、ワンマンプレーの零細企業経営者というのは、初めからこのようにして、逆境に立たされているのです。 大企業のような感覚で、大企業と同じ土俵で競争しようとしても、勝てるわけがありません。

生き残ろうとしたら、まずは自分の置かれている状況を自覚することです。(例: 自分はニンゲンではなく、タコなのだ。今はタコとしての道を極めつつ、少しずつ進化していって、いつかニンゲン対抗できるくらいになろう。 とか・・・)
私は「大企業の自称エリート社員」と「自営業のしがない経営者」の両方を経験したことがあり、どちらのタイプの人種も数多く接していますが、それぞれ際立った特徴があります。

大企業の優秀な社員は、やはりよく教育を受けています。沢山の本を読み、知識が豊富で教養があり、複雑な問題でも解決できるだけの頭を持っています。仕事をするにあたっては、やはり組織として、組織の一員として考えることがほとんどです。分業制ですね。自分の弱い分野は、別の人の力を借りながら、チームプレイで目標に向けて動くことを得意としています。 但し、組織を放り出されて一人で何もかもやれと言われたら、おそらくほとんどの人が太刀打ちできないでしょう。ワンマンプレーで全責任を負って頭も手も足も同時に使うことには慣れていないのです。野生に戻るのは難しいのです。

自営業の経営者は、多くの場合、これと全く逆で、まずチームプレイというのが極めて苦手です。ワンマンに慣れ過ぎてしまったのでしょう。頭と手と足を同時に使いながら、野生の世界で一人で何でも器用にこなす能力は、おそらくサラリーマンの比じゃないほど優れていますが、器用貧乏というか、頭も手も足も中途半端になりがちです。特に「頭」の使い方は、残念ながら、ただでさえ周りにブレーンがいないのに、あまり使っていない経営者が多いのが現実ではないでしょうか? 忙しいので本も新聞もあまり読まず、ネットサーフィンすることもなく、土日も働きづめのため世間で何が流行しているかもわからず、取り残され、アンテナが錆びついて、そのうえ、日頃から自己啓発の訓練をしていないものだから、いざ何か勉強しようと思っても、肝心の読解力や理解力も錆び付いていて、せっかく有益な情報が目の前にあっても、それを100%吸収できないことが多いのではないでしょうか?

もちろん、全部の零細企業経営者がそうだとはいいませんが、おそらく多かれ少なかれ、当たっている部分は相当あるでしょう。
私は何も、批判するためにこれを書いているのではありません。 ただ、現実を認識して、何らかの形で自分の弱い部分を補っていかないと、事業の再生を実現することはまず不可能でしょう。 

この「ヒント集」の目次の冒頭にも書きましたが、私は「中企業」には全く関心がありません。「中小企業」という括り方にも疑問を持っています。「中」と「小」ではまるで違うのです。私が関わっていきたいのは、ピラミッドの底辺付近にウヨウヨいる、小企業〜零細企業のほうです。数としては圧倒的にこっちのほうが上で、大企業や中企業を間違いなく支えているにもかかわらず、その経営者たちは上に書いたように頭脳として弱く、キツイ言い方をすればバカばっかりです。 

バカばっかりだと、レベルの底上げができません。底上げができないと、景気はいつまでたっても良くなりません。仮に良くなっても、それは正三角形のピラミッド型ではなく、もっと落差の激しいいびつな形をしたものになるでしょう。それは望ましいことではありません。

零細企業の皆さん、もっと賢くなってください。無理に難解な本を読む必要はありませんから、基本を押さえてください。オール5は要りません。(オール3を目指しつつ、一つぐらい5が取れれば十分です。)

零細の社長さんたちと話していると、「売上総利益」と「営業利益」と「経常利益」の区別もつかない人が大勢いることに驚かされます。粗利益と純利益の区別もつかず、記帳は全て奥さんに任せっぱなし。申告は税理士さんに丸投げ。

債務に関する知識でも、中小零細企業なら誰でもお世話になっている「保証協会付き」や「国金」についても何も知らなかったり、知っていても、代位弁済の仕組みや抵当権実行の仕組み、連帯保証人の責任の範囲などを何も知らない方が大変多いようです。そのうえ、(これは無理もありませんが)、返済できなくなったときの防御の仕方もまるで知らないものですから、万一返済できなくなると、極めて短絡的に、「返済不能」→「自殺か夜逃げ」という図式を思い描いてしまうのです。

こんなことで良いわけがありません。 

あえてバカバカと書いていますが(スミマセン)、私はこれからも、バカな零細企業経営者がオール3程度の成績を取得できるくらいに、レベルを落として、難解なことは書かずに、噛み砕いて情報提供したいと思っています。 皆さんもこれについてきてください。 レベルの底上げを目指しましょう!
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