倒産は計画的に。
吉田猫次郎
(2006年10月3日発行のメールマガジンより抜粋)
『倒産は計画的に。』

事業再生を目指すうえで、倒産は絶えず意識していなければなりません。

倒産というのは、何が何でも排除しようとムキになればなるほど、かえって近づいてきます。逆に、倒産を過剰に恐れず、ひとつのリセット手段として受け入れる覚悟があると、かえって遠のいていくものです。その意味でも、倒産に対する心構えは身につけておきたいものです。

さて、本題です。

不謹慎なタイトルです。

「計画倒産」というと、なんだか犯罪的な響きがありますよね。

しかし、誤解を恐れずに言えば、倒産は計画的にするべきです。

もちろん、映画や小説に出てくるような、取り込み詐欺のような計画倒産は許されません。あんなのは論外です。

が、商売を長く営んでいれば、どんなに真面目にやっていても、倒産を余儀なくされる場面があることでしょう。そんなときは、やはり、詐欺罪等に抵触する恐れのない範囲で、計画的に倒産処理を行うべきです。多少の罵声を浴びても。

「何を非常識な!」という向きもあるかもしれませんが、そういう人は、固定観念が強すぎると思います。もう少し、想像力を豊かにして柔軟に考えてほしいと思います。自分がそういう状況に陥ったら、どう対処するかを。

たとえば、慢性赤字体質で将来的な展望もない債務超過企業が、倒産危機という現実を受け入れられず、弁護士にもその他専門家にも相談しないまま、独り善がり的に、「債権者には絶対迷惑かけられない!そのためには何でもやってやる!」という気持ちに支配されてしまうと、どうなってしまうでしょうか?

多くは、目先の返済・支払のために他者(高利貸し等)から借りてまで資金調達して、より傷口を広げることになります。しかも、そこまでやっても問題の先送りにしかならず、きっと近い将来、もっと大きな傷を負って倒産してしまいます。 または、ギリギリまで頑張り過ぎてしまって(このパターンが最も多い)、いざ倒産処理が必要なときに、弁護士費用も裁判所費用も当面の生活資金も何も残っておらず、結局、しかるべきタイミングで手続きに入れなくなり、収集つかなくなる恐れがあります。最悪の場合、思い詰めて自殺や夜逃げに走り、周囲に後味の悪い思いを残すことになりかねません。

一方、「計画的に倒産する」と、一時的には債権者に少なからず迷惑をかけることに違いありませんが、迅速・確実に手続きに入れるので、手続きの最中につまずくことも少なく、手続き後の再起も早く、結果、より早く確実に社会復帰でき、ひいては社会還元や迷惑かけた相手へのお返しができるようになっていきます。大局的にみても、こういうパターンが多いほうが、経済の循環が良くなって、世の中のために良いはずです。

現に、法律や経済を知り尽くした専門家の書いたものを読むと、必ずといっていいほど、「早期着手が望ましい」ということが書いてあります。 これは、俗な言い方をすれば、「倒産するなら計画的に!」と言い換えることもできます。

倒産は確かに傷を負います。人に迷惑もかけます。

しかし、「生きる」とか「死ぬ」とか、そんな次元のものではありません。

倒産を余儀なくされても、死ぬ必要はありません。 (死ぬ必要があるなら、法律で「倒産社長は死刑に処す」などと決まっているハズですよね?でも実際にはそんなことは有り得ません。とすると、倒産しても死ぬ必要はないはずですよね。わかりますよね?)

我々は資本主義社会のもとで暮らしています。 資本主義の定義は実際は大変難しいのですが、わかりやすくいえば、競争のうえに成り立っている社会です。 競争があるということは、「勝ち」も「負け」もあることを意味しています。 誰でも「負け」を味わう可能性が高いのです。 このへんは野球と同じですね。野球では「打率10割」の打者はいません。打率3割で強打者扱いですが、残りの7割はアウトです。 でも、野球の世界では1回三振しただけで死刑になったりクビになったりはしませんよね? それどころか、強打者は、数え切れないほどの三振を繰り返しながら成長していますよね? 資本主義社会もこれと同じです。資本主義を成長発展させるためには、勝ちと負けを繰り返して切磋琢磨する必要があります。そのために、法制度などで、負け組もちゃんと暮らしていけて、何度でも再チャレンジのチャンスがあるように整備しなければ、社会は成り立ちません。

そして、現に、我が国は、競争に「負け」ても、ちゃんと人間らしく暮らせるように出来ています。何度でもやり直しができるように出来ています。 これは学校でも日常生活でもあまり教えられることがありませんが(どうしてでしょうね?)、我々が知らないだけで、制度としては弱者救済、敗者復活のチャンスはいくらでもありますから、是非覚えてほしいところです。

とにかく、倒産=死刑ではありません。倒産=犯罪でもありません。

倒産しても、傷口が浅ければ、より早く再起できます。自己破産した直後に新しい会社を興すことだって可能です。より早く再起して社会還元を目指すなら、「倒産は計画的に」やるべきだと思います。
「事業再生のヒント」目次へ戻る
トップページへ戻る
Copyright(C) 2001-2007, Nekojiro Yoshida, All Rights Reserved. since Jan/10/2001