そもそも倒産って何だ?
倒産とは何かも知らないのに、闇雲に恐れるな!
吉田猫次郎 2006年10月
(書き下ろし)
「倒産とは何か」もロクに知らないのに、皆さん、倒産をまるで死刑宣告であるかのように恐れています。ナンセンスです。


【勘違い1】 
まず、倒産(とうさん)とは「状態」です。「手続き」ではありません。
裁判所の手続きでも、「倒産手続き」という名前のものはありません。
新聞記事でも、「XX株式会社は、○月△日、東京地方裁判所にて、倒産申立てをした」 という書き方はしません。

≪ 倒産(とうさん)とは、経済主体が経済的に破綻して弁済期にある債務をどれも弁済できなくなり、経済活動をそのまま続けることが不可能になった状態のことをいう。日常用語としては経営に行き詰まって会社がなくなるといった限定的なニュアンスで使われる場合もあるが、倒産の対象となる経済主体は会社だけではなく個人(自然人)も含まれる。また、会社を含む法人が経済主体の場合であっても、必ずしも法人がなくなるとは限らない。会社の倒産については、新聞などの報道では、最近は経営破綻という言葉が使われることが多い。(中略)  なお、「倒産」、「経営破綻」、「自治体の倒産」は法律上の定義ある用語ではなく、事実上の用語として用いられるものである。≫(引用元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

とあるように、くりかえしますが、倒産は「手続き」ではありません。「状態」です。

中には、手形不渡りを出したり自社ビルが競売にかけられたりして「事実上の倒産」状態にあっても、廃業せずに粘って粘って、倒産状態から脱出できた人もいます。


【勘違い2】
破産(はさん)は、「手続き」です。「状態」とはちょっと違います。
よくマンガなどで、借金が返せなくなったり無一文になった主人公が「もうダメだ!破産だ〜!」と泣き叫ぶようなシーンがありますが、これは誤解を招きやすい表現ですね。
実際には、返済が遅れたからといって自動的に破産になるものではありません。
早とちりしてはいけません。

破産は、裁判所で行われる手続きです。
裁判所で手続きが行われなければ、それはただの「破産に近い状態」にすぎません。破産者ではありません。


【勘違い3】
「競売」も「差押」も倒産ではありません。よく、競売予告通知が来ただけで「もうダメだ、終わりだ」と諦めてしまう人がいますが、勘違いもいいところです。 これらは借金や仕入代金が払えない状態が長く続いた時、相手(債権者)が回収のための最終手段として訴訟を起こし、そこで請求金額などがキッチリ決まり、それを根拠に裁判所を通じて強制的にモノで回収しようという手続きにすぎません。もっと端的に平たく言えば、「債権回収のための一手段」にすぎません。確かにここまでやられると、倒産状態に近いことは間違いないでしょうが、社長さんが諦めて倒産のための手続き(破産等)に入らない限り、これも倒産とは到底いえません。

同じ理由で、よく債権者から来る「法的手続き予告通知」の「法的手続き」も、倒産ではありません。法的手続きとはすなわち、自力で請求してもラチがあかないから、裁判所で請求訴訟(民事)を起こして、回収できる可能性を少しでも上げましょうという手段にすぎません。 倒産手続きや刑事裁判とゴッチャにしてはいけません。 裁判所は考えようによっては、仲裁役を間に入れて、自分の言い分を聞いてもらえる良いチャンスです。「一括請求」されているのを「無利息の分割払い」で和解してもらうのも、裁判所を使えばそう難しくありません。 居心地もなかなかいいので、是非一度足を運んでみてください。

わかりますか?

以上のように、「倒産」とは、自動的にすぐになってしまうものではなく、「自ら事業継続を断念するか、もしくは破産などしかるべき手続きに入った場合か」、どちらかでなければ倒産とは言えないのです。逆にいえば、破産などの手続きに入っておらず、事業継続の意欲も強く残っているなら、いかなる苦境に陥っていても、「倒産と決め付けるにはまだ早い!他にも道があるかもしれない!」と言えるのです。
【では、倒産の「手続き」にはどんなものがあるか?】
◆ 中小零細企業や個人の場合、最もポピュラーなのは「破産」です。

破産は懲罰制度ではありません。ゲームセットのための一手段のようなものだと思ってください。
人生、何度でもやり直しがききます。一度事業に失敗した人は、2度目でも3度目でも再チャレンジできます。前の失敗を教訓にして再出発すれば、きっと次はもっと高いステップに登れるでしょう。 それは格闘技やスポーツと同じです。負けを繰り返しながら強くなっていくのです。 

破産しても、生きていくうえで最低限のモノは残しておけます。(例:個人の自己破産なら、99万円までの現金、20万円までの預貯金、解約返戻金20万円以下の生命保険、査定額20万円以下の自動車などは残せます。) 

破産で失うのは、金目の財産だけです。そのくらい、別にいいではではありませんか。財産より負債のほうが膨大で、事業でもそれが返していけない状態ならば、両天秤にかけて比較すれば、財産を失ってもいいから負債を(破産で)無くしてしまったほうがメリットが大きいことは容易にわかるでしょう。

◆ 破産には、自分のほうから裁判所で申立てるのが「自己破産」と、債権者側から申立ててくる「債権者破産」とがあります。最もポピュラーなのが自己破産で、債権者破産はごく少数です。 
産」と「自己破産」を混同しているようです。

◆自己破産を選ぶかどうかは、最終的には自分自身で決めてください。「専門家や周りの人間に強く押されて、なんとなく破産してしまった・・・」 なんていうのは愚か者です。 また、これとは逆に、誰にも相談しないで自分の独断と偏見で自己破産すると決めてしまうのも愚か者です。 気の済むまで専門家に相談し、ネットや書籍などで情報収集し、同じ境遇を経験した人にも相談し、遠回りし、悪あがきし、悩みに悩んでから破産を選んだって遅くはありません。 確かに傷口はこれ以上深くならないほうがいいでしょうが、悪あがき・熟考した上での自分の意思での破産は、後で後悔することがありませんし、長い目で見て大変貴重な経験・財産になります。 どうせ破産するなら、その過程を自分の肥やしにしましょう。

◆債権者破産は、自分の意思とは関係なくリセットを強制されるので、ちょっとツライものがあります。身近な例では「ヒューザー」が欠陥マンションの住人たちから破産を申立てられ、受理されました。ヒューザー社長は事業継続しながら債権者に返していきたいと考えていたようですが、破産により、それもできなくなりました。これなどは一種の制裁として申立てられた形になりますね。   また、2ちゃんねるの西村氏は、名誉毀損などで数々の訴えを起こされ、『訴訟多数と多額の(2000万円前後、あるいは計8億円弱ともいわれる)賠償債務を抱えている。但し、本人は応じる気はなく、判決に仮執行宣言がないのをいい事に請求を時効まで放置するつもりらしい。』(引用元:ウィキペディア・西村博之のページ) とのことでしたが、2006年9月に、これらの債権者から破産を申立てられたそうです。 この場合、破産を申立てた債権者の狙いは、「どこかに隠し財産があるに違いない」と読んで、裁判所の破産手続きによって西村氏の財産内容を丸裸にする狙いがあるようです。(と、最近読んだアエラの記事か何かに書いてありました)

ただ、この債権者破産も、多額の借金に苦しむ一般的な中小企業の社長さんたちは、さほど恐れる必要はないでしょう。隠し財産があるような人は別ですが、無理に無理を重ねて、自分の給料もロクにもらわないで一所懸命返済しているような社長さんが9割方を占めているように見受けられます。そのような人達は、多かれ少なかれ、破産を覚悟しなければなりません。破産しても死ぬわけではありませんから、何度でもやり直せばいいのです。また、自己破産には結構な費用がかかりますが、債権者破産は申立人である債権者が費用を出すわけですから、実質的にカネがかからないという思わぬメリットがあります。個人の「免責」手続きも後でちゃんと受けられます。  このように債権者破産は、されないに越したことはありませんが、されたらされたで、まだまだ新たな道が開けます。 おそらく、2ちゃんねるの西村氏も、これから破産宣告(破産開始決定)がなされて財産のすべてを失ったとしても、さほど動じないでしょう。 破産宣告が出ても、彼自身の行動まで縛られるわけではありませんから、きっと何度でも再起するでしょう。(私個人的には応援してます。同じ大学だし・・・)

◆破産のことばかり書きましたが、破産以外の「(明らかな)倒産のための手続き」としては、「(裁判所の)特別清算」、「(法務局などで)自主廃業」、「(何もしない)放置」 などがあると言えます。 「特別清算」は滅多に使われないので説明省略します。「自主廃業」は文字通り会社を自主的に解散して廃業することですが、法務局等でその手続きをしても、もし会社としての債務が残っている場合、その債務は残ります。 自主廃業はおもに、残債務の処理が問題にならない段階で使われます。(皆さんにはあまり縁がないかもしれませんね)

なお、「放置」はかなり特殊ですが、しかしその割には、破産や民事再生よりもずっと多いという説もあります。確かにそうかもしれません。夜逃げとまではいかなくても、裁判所でも法務局でも税務署でも何の手続きもせず、債権者から督促がきても支払いに応じられないから中途半端な交渉などせず、倒産状態を受け入れて、だけど手続きは何もしない・・・。そんなゾンビのような会社が、私の知っているだけでもいくらでもあります。良いか悪いかは別にして、そうしている人が多い以上、これも何かのヒントにはなるかもしれませんね。
【倒産とは言い難い倒産手続き=「再生のための手続き」も多数ある。】
たとえば「民事再生法」「会社更生法」などは、同じ裁判所の手続きであっても、はたして倒産と言えるかどうか微妙・・・というか、倒産とは言えないと言っていいでしょう。 よく新聞などで 「○○社は民事再生法を東京地裁に申請し、事実上の倒産をした」という記事がありますが、この表現は適切さを欠くかもしれません。 確かに「経営が破綻した」ことは事実であり、その点では一旦倒産状態に陥ったことは間違いないのですが、会社更生法も民事再生法も、文字通り、「更正」「再生」のための制度なのですから。

難しい解説はここでは省略します(暇なときに改めて解説するかもしれません) が、会社更生法も民事再生法も、その法人は解散せずに残ります。 民事再生法にいたっては、役員まで退陣せずに済みます。社会的信用は一時的に失墜しますが、それもいつかは忘れられます。 「そごう」「第一ホテル」「吉野家」「大沢商会」「エアドゥ」「(旧)ライブドア」「ライフ」「アエル」など、事実上の倒産と言われながら現在は完全に復活を遂げた企業はいくらでもあります。 そう。これらは「再生型の手続き」なのです。

ただ、「会社更生法」は実質的には大企業しか使えません。民事再生法もまた、申立て手続きの手間が自己破産手続きよりも煩雑で、費用も破産より高くなりがちです。 誰でも容易に使える制度ではありません。 弁護士によく相談しながら可能性を探るところから始めなければなりませんので、最初から「民事再生法で生き残ろう!」と過剰な期待を抱くのは禁物です。
【他にもいろいろある】
「廃業型」の手続きは、上に述べたぐらいでそれほど多くありませんが、「再生型」のほうは、裁判所の手続きを伴うものから私的なものまで、選択肢がまだまだ数え切れないほどあります。 ここでは省略します。私のホームページや本を隅々まで読んで頂ければ、その手法の数々が、少しずつ、しかし明確に、お解かりいただけるようになると思います。お暇なときに是非熟読してみてください。
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