『同じことばっかり続けるのはバカ?・・・いや、バカもいいかもしれない』
◆ 英語の諺で、"A rolling stone gathers no moss."(転がる石にはコケがつかない)というのがあります。
この諺、英国と米国では基本的な解釈がまるっきり違うようです。
伝統を重んじる英国では、「(仕事などを)落ち着きなくコロコロ変えているようでは、何も身に付きませんよ」という意味で使われることが多いようです。日本で言うところの「石の上にも三年」に近いでしょう。
ところがアメリカでは、日本で言うところの「流れる水は腐らず」という意味に近く、転がる石→コケがつかない→いつまでも新鮮というような、プラスイメージ的に使われることが多いようです。
同じ言葉でも、二面性があって面白いですね。
余談ですが、ローリング・ストーンズは英国出身のバンドですが、アメリカで大成功を収めています。ギターを持った不良が、いつまでもマイペースで同じ事を続けているうちうにカリスマになっちゃったという、これまた二面性を持ったバンドです。(私は好きです)
◆ さて、本題ですが・・・、
事業を継続するにあたって、時流に左右されず同じことをいつまでも続けるのが良いか、それとも、時流に合わせて商材やビジネスモデルを絶えず変化させるのが良いか、迷うことがありますよね。
これはつまるところ、本人の適性や嗜好や戦略で決めてしまって良いことであり、どちらが正解でどちらが不正解であると一概に言えないものでありますが、事業が行き詰まると、たいていの経営者さんは、「このままでいいのだろうか」と不安になり、変革させることを考えると思います。
それはそれでごくノーマルな考え方なのですが、経営にロマンを求めている人は、ここでちょっとひとひねり加えて、逆バリ的な発想、つまり、経営が行き詰まっても斜陽化しても、気にせず同じ事をバカみたいに続けることを再評価してみるのも面白いと思います。
マンション不況の中、敢えてマンション販売業に固執するとか、海外生産主流の今、敢えて国内生産の製造業に固執するとか・・・。
◆ 興味深い例では、レコード針を製造販売している会社で、ナガオカという会社があります。ナガオカはレコード針の最大手で、オーディオブームの1980年代前半までは隆盛を極めていましたが、80年代後半にレコードがCDに急変してからは業績が急激に落ち込み、87年にとうとう倒産してしまいました。
ところがその後、ナガオカの元社員たち数名が、90年になってからナガオカトレーディングという会社を興し、レコード針の専門会社として事業展開しはじめました。CD全盛の時代に、敢えてレコード針専門の会社を(しかも一度潰れたのに、懲りずに)立ち上げたのは、大変な勇気と自信が必要だったことと思います。
このとき、既にライバル会社は姿を消していました。ナガオカトレーディングは唯一のレコード針専門メーカーになったのです。CD全盛で、レコードの需要はどん底まで落ちていましたが、それでもアナログ盤にこだわるマニアが残っていましたので、そのマニア層を独占することができ、徐々に業績を上げていきました。そして現在は、自社ビルを構えられるまでに成長しているそうです。年商10億円突破だとか・・・。 (以上、昔読んだ新聞記事を思い出しながら書いていますが、間違いがあればご指摘下さい。)
良い話ですね。
◆ 私のところに相談に見えた零細企業の経営者さんの中にも、このように、同じ商材や同じビジネスモデルにこだわり続け、業界の斜陽化にもめげず、周囲にバカにされようと何を言われようと、確信的に同じことばかり続けている方がいます。私はそのような、頑固なタイプの経営者さんが結構好きで、相談を受けた時は、本業には一切干渉せず、「勝つためのアドバイス」なんて余計な助言を一切せず、ただ「負けない(死なない)ためのアドバイス」だけにとどめることが多いです。
一般的に、「収益をV字回復させる」のは至極困難ですが、意外や意外、「倒産させないこと」だけなら、実は簡単なのです。(簡単に言ってしまえば、どんなに借金返済が遅れても、どんなに強制執行を受けても、経営者自身が「おれは潰れていない!」「事業を続けるのだ!」と言い張れば、倒産手続きに入らない限り、潰れたことにはなりません。もちろん精神的苦痛は並大抵ではありませんが・・・) あとは本人さえよければ、苦しいながらも倒産だけは避けて、細々と続けていくことは十分可能です。そして、細々とやっていくうちに、競合先が自然淘汰されて、需要・供給共に濃縮度が上がっていき、狭い世界で独占化できるかもしれません。実際、独占化まではいかないまでも、何年か辛抱した後に受注が急増したという方は少なくありません。
こういう頑固一徹な経営者さんには、是非潰さずに頑張ってもらいたいものです。
特に、日本ではモノ作りが空洞化しつつありますから、製造業の方には特に頑張ってもらいたいものです。
合理性ばかりが求められている今、こういう不合理さは、時としてものすごく新鮮に映ります。誇りを持ってください。
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