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株式会社NEKO-KENは「中小企業・零細企業の倒産を防ぐ為のコンサルタント会社」です。

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【第3章】そして行動に出る 〜 どん底からの生還HEADLINE

戦いの幕開け

X月X日。
現在、6件の違法マチ金(10日で1−3割)からの借入残高が、計700万円にまで膨れ上がっている。 これらすべて手形貸付。 預けている手形には期日が書かれていない。つまり、いつでも銀行に回せる。手形のほかに、白紙の委任状や印鑑証明も預けている。利息は10日で1−3割。年利に換算すると360%〜1080%ということになる。

こんなにひどい契約で借りるなんて、本当になんて私はバカだったんだろう。
確かに切羽詰まってしかたなく借りてしまったんだが、一体「何に」切羽詰まっていたのだろう?当座を守るため?商工ローンの取り立てが怖いから?取引先に迷惑かけたくないから?

いろいろ理由はつけられるが、今はっきり言えることは、私はあまりにも無防備・無知だったということだ。違法の金融業者のことを非難する以前に、まず借りた私が悪い。このあたりをはっきりと認識しておかないといけない。そのうえで、私が生き残る方法を考えなくてはならない。
(いろいろな多重債務経験者に相談したが、「借りた私が悪い」という気持ちが、借金解決の上で非常に重要なキーポイントになる。 このことは別の項で説明する。)

マチ金の次の金利返済日は2日後に迫っている。私は、この数日間のうちに一気に情報収集して練った対策をすぐに実行に移すために、いろいろな準備に入っていた。

まず利息計算。各社別に、今までの借入日、回数、各回の融資金額、返済日、返済金額を表にまとめ、その実質金利や借入総額・返済総額をはじいてみた。すると、6社中3社は借入元金100−150万に対して、わずか数ヶ月のうちにすでに130−200万も返済していることがはっきりした。ほぼ10日に1回の頻度で利息(1−3割)を返済しに行っていたのだから当然といえば当然である。つまり、これらの会社は既にじゅうぶん元が取れている上に、わずか数ヶ月のうちに30万−50万の利息を取っているわけだ。一方、法定金利に再計算してみると、これらの借入に対する利息はせいぜい3万−12万。つまり、各社27万〜38万もの金額を、法定金利よりも多く払い過ぎていたのである(法定金利の計算方法は地元の商工会が主催する弁護士無料相談会でじっくり教わった)。確かに相手は違法業者なので、法定金利云々を主張しても相手にしてもらえないだろうが、我々の心づもりとして、数字的にはっきりと認識しておく必要があった。
残りの3社についても、取引は浅いが、元金の半分くらいは返していた。さすがに過払いで借金チャラというわけにはいかないが、交渉しだいでは、ある程度減額できるかもしれない。

次に、6社各社の許認可登録について調べてみた。東京都庁の貸金業課(だったかな? )へ行けば、都知事登録してある貸金業者の登録内容(登録番号・登記上住所・代表者住所など)について閲覧できるのである。調べてみていろいろなことがわかった。ちゃんと業者登録してあるのは6社中4社だけで、残りの2社は無免許だった。 また登録してある4社も、設立して1-2年しかたっていない。コンピューターの画面でしか閲覧することができないので、私はそれを細かくメモした。

次に、その登録に書かれている会社の登記簿謄本を、それぞれの区の法務局に取りに行った。 しかし、会社として登記されているのは、6社中1社しかなかった。 都知事登録の上では株式会社や有限会社の商号がついているのに、だ。 つまり、都知事登録の内容自体がデタラメだったのである。 (よくそれで都が許可したもんだ・・・)

翌日は、これらの調査資料をまとめて、霞ヶ関の簡易裁判所へ足を運んだ。 まずは裁判所がどんなところか、自分の目で見てみたかったのである。

ここへ行って、裁判所に対するイメージがガラリと変わった。 一般人が個別相談できるコーナーがあり(法律相談ではなく、裁判手続きに関する相談だが)、主婦やサラリーマンなど沢山の「普通の人」が相談に来ていた。 私が想像していたよりも、ずっと簡単に手続きできるところだった。 たとえば調停の場合、法律の専門知識がなくてもじゅうぶん1人でできることがわかった。 費用も安い。 私の場合、仮にマチ金6件全部申し立てても、総額1万円にも満たないという。 また、調停や訴訟を起こしたその日から、貸金業者は取り立てを一切してはいけないらしい。 このことは私を大きく安心させた。
弁護士を使わず自分で申し立てる最低限の条件としては、自分の債務状況(件数、金額、利率、取引期間など)、および自分の資産、収入、希望の返済方法をきちんと説明できる資料を用意すること。 あとは相手の登記簿謄本や契約書などを可能な範囲で用意しておくこと。 それだけだ。

ただ、違法マチ金業者の場合、訴訟や調停を申し立てても、まず絶対に出てこないだろうと言われた。 出てこなくてもそれなりの効果はあるらしいが・・・。

私はその日は説明をきいて、申請用紙をもらうだけにとどまった。
申し立てするかどうかは今後の成り行きによるが、これでいつでも申し立てできるだけの準備は整った。


マチ金への返済をストップ。 取り立てが始まった・・・

2日後。 マチ金A社の返済日である。 ここからは最初80万借りて、以後10日で2割の利息がついていた。 最初の2回ほどは一括返済していたが(80万→10日後に100万返済! これを2回繰り返した)、その後は一括返済ができなくなり、20万の利息だけを10日おきに支払う日々が2ヶ月ほど続いていた。 計算してみると、もう元金の倍近く返している。 相手としても十分元が取れているはずだ。

朝一番でA社から電話がかかってきた。

A社 「猫次郎さん、きょうはお利息だけですか? それとも全額決済してくれますか?」

私 「すみません。あちこち金策に走ったんですが、もう貸してくれるところがなくて、結局一銭も用意できませんでした。」

A社 「それじゃ困るんですよ。2時までにお利息だけでも用意してもらわないと、手形を交換に回すしかないですね。」

私 「もうここまできたら、会社を潰すしかないかもしれないと諦めかかっています。申し訳ないんですが、できればもうちょっとだけ待ってもらうことはできませんか?」

A社 「甘ったれるんじゃないよ。とにかく今日2時までにうちに来てよ。現金持ってさ。 ガチャッ」

私は内心ガタガタになりながら、午後1時ごろにA社を訪れた。 手ぶらで行こうかと思っていたが、いざとなるとそこまでやる勇気はなく、財布の中に非常用に3万円だけ用意して、かばんの中には録音機を忍ばせて行った。 財布の中のクレジットカードや身分証明書などは駅のコインロッカーに隠しておいた。 そして交渉が始まった。

A社 「どうですか猫次郎さん? お金は用意できましたか?」

私 「いえ、あちこち金策に回ったんですが・・・ダメでした。 もうどうしたらいいかわかんなくなりました。」

A社 「困りましたね〜。 このままじゃ、手形が回って、不渡りになっちゃいますよ。不渡りになっちゃうと、こんどはウチとしても、強制執行みたいな手に出なきゃいけなくなっちゃう。 もともとそういう約束だったでしょ?約束を守ってないのは猫次郎さんでしょ?うちもできれば手荒なマネはしたくないから、なんとか利息だけでも返済守ってくださいよ。」

私 「なんとかしたいのは山々なんですが、ホントにもう、精魂尽き果てちゃって・・・。 なんとか勘弁してもらえませんか?」

A社 「ムリムリ。 僕だってこのままじゃ上に説明つかないですよ。 猫次郎さんがの希望通りにやったら、俺がクビになっちゃう。 そうだ、猫次郎さん、財布にいくら入ってますか? 今日はあるだけの金額をお預かりして、一応クレジットカードも保全のために預からして頂いて、今日はそれで何とか上を説得してみますよ。」

私は自分の財布を出し、相手にそのまま見せた。 もちろんクレジットカードは入っていない。現金も1万円だけ入れて、あとは隠しておいた。

A社 「なんだこりゃ。 1万円しかないの? カードは? え?没収された? しょうがねーな・・・」

と言い残し、彼は事務所の奥のほうへ行ってしまった。
約20分後、彼は戻ってきて、

「猫次郎さん。今社長を説得してきたよ。 明日まで待ってくれるってさ。 よかったね。手形も今日は依頼返却かけとくよ。そのかわり、明日は今日の利息分も入れて22万持ってきてくれなきゃ困るよ。」

翌日、また同じ手口でA社ほか数社の返済をちょっとだけ引き延ばした。

そして同日、東京簡易裁判所へ出向き、街金6社を相手に調停申立ての手続きをした。
「事件番号」の書かれた受領票を6枚もらった。 しかし街金6社にはあえてそのことを報告せず、
翌日まで様子を見ることにした。

翌々日、ようやっと心の準備も出来てきたので、こんどは1円も持たずにA社ほか数社を訪問した。 決死の覚悟で。

A社 「何?1円もない? ふざけんなよ! もう手形回すからな。おめー、街金をなめんじゃねーぞ」
私 「すみません・・・覚悟してます」

午後3時、私は家に帰り、交渉決裂したことと、多分今度こそ不渡りは免れないことを家族に報告した。
(このときは、手形を差し止める方法など知らなかった)


不渡り

A、B、C社 「猫次郎さん、きょう不渡りを出しましたね」
私 「え?手形交換所に回って不渡りが確定して公表されるまで確か3-4日かかるはずですが」

私はすっとぼけて言った。すると、

B社 「てめえ、しらばっくれてんじゃねーよ。 自分が何やったかわかってんのかよ!」
C社 「まあまあ。 私は不渡りでも貸してくれる業者を知ってるんですよ。紹介しますから、借りてきてくださいよ」
A社 「甘いよ。 こいつら街金をなめてんだよ。 おい猫次郎、金目の物を全部出せよ。 それから親戚に今すぐ電話しろ。金貸してもらえ」

こんな調子で、約30分間続いた。

その後、事前に呼んでおいた警官が来て、一時中断したが、民事不介入とか何とか言ってすぐ帰ってしまった。
そしてその直後、前日から頼んでおいた友人3名が駆けつけてくれた。 破産経験のあるオジサンと、多重債務相談員をやっている人と、体育会系のいかつい体格をした友人である。 これで救われた。 街金3社は態度が一転して、

「うちは話し合いに来たんですよ。 何も取り立てに来たわけじゃない。 明日また来てくださいよ」と言い捨てて、3社ともすぐに帰ってしまった。

不渡りを出したその日は、こんなふうにして意外にあっけなく過ぎていった。

不渡りで本当に恐い思いをするのは、その翌日から3-4日間のことである。

監禁

翌朝、街金6社全てから怒涛のような電話攻勢がきた。 やはり6社はグルだったのだ。 グルでなければ、不渡りがこんなに早くわかるはずがない。

D社 「今すぐウチに来てください。 もうおたくの取引先に債権譲渡の内容証明送ったからね。覚悟してよ。」
E社 「うちも今日、おたくの手形回すからな。2回不渡りしたら、おたくも夜逃げするしかないよ。嫌だったらお金持ってきてね」
F社 「こっちは委任状預かってるんだからな。電話も家も車も取れるんだよ。覚悟しとけよ」

これに対して、私はすぐに行動に出た。 既に調停を申し立てていたので、それを相手に伝えて、手形を引っ込めさせようと思っていた。 私はすぐに6社に調停を申し立てたことを電話で伝え、今後の返済方法は裁判所で話し合いましょうと提案した。

すると、6社のうち2社はおとなしくなり、電話での態度も穏やかになった。 「100万の手形はもう返しますから、どうですか、50万円で和解しませんか?」 というようなことを言ってきた。

あとの2社は、電話でぎゃーぎゃー言ってきているものの、結局手形を回すことはしなかった。

残りの2社は、既に債権譲渡通知書の内容証明を私の取引先に送ったとか、今日手形を回すとか、住宅も仮登記するとかわめきちらしていたので、このままでは何が起こるかわからないと思い、午後、話し合いのために私ひとりで相手の会社を訪問した。 もちろんこのとき、録音機を忍ばせて、財布の中身は電車賃だけだったことは言うまでもない。 さらに、両親と友人に、XX時までに私が帰ってこなかったら警察に連絡してくれ、と言い残しておいた。

午後2時、最も恐ろしいE社を訪問。 入るなり、事務所の鍵を閉められ、お茶をぶっかけられた。

「てめえ、なめたことをしてくれるじゃねえか」
「サイフの中身全部出せ」
「てめえん家はもう仮登記したからな。占拠屋にも話つけてある。もう家に住めなくしてやるからな」
「もうてめえは破産して夜逃げするしかねえんだよ。 死ね!」
「電話も車も譲渡手続きやってるからな。 身ぐるみはがしてやる」
「嫌だったら今ここで親戚と友達と取引先に片っ端から電話かけて、金貸してもらえよ。 嫌だとは言わせねえぞ。 どこまでもつけてってやるからな!」

約4時間、こうした罵声を浴びながら、私はE社の事務所に監禁された。
しかし、いくら友人に電話をかけろと要求されても、私は応じなかった。 殴られはしなかったが、何度も熱いお茶をかけられ、胸ぐらをつかまれ、土下座させられた。 しかし私は「貸してくれる友達はいません」とつっぱねた。

そしてとうとうEがしびれをきらし、私を車でどこかへ連れ出そうとしたそのとき、E社の事務所に私の両親と友人から電話が入り、警察を呼んだと言ってくれた。 (実際には呼んだけどなかなか取り合ってくれなかったらしいが・・・) そしてようやっと私を解放してくれた。 「いいか、明日までに絶対金を用意してこいよ。 でないと、今度はおめえの家族に迷惑がかかるからな」と言い捨てて。 私は警察に被害届を出そうと思ったが、精神的にかなり参ってしまい、そのまままっすぐ家に帰った。


深夜の家族会議

私はE社での出来事を家族と友人に報告した。 長時間監禁されたこと、お茶をかけられ、土下座させられたこと、今夜にも自宅に占拠屋が押し寄せてくる可能性があること、親戚や友人に金を借りに行かされそうになったこと・・・。 そして、明日には家族が何をされるかわからないこと。

同席していた友人はすぐに警察に行った方がいいと言った。 しかし、警察はまるで相手にしてくれないどころか、「金を借りて返せないあんたたちが悪い」という態度だ。 まるで頼りにならない。 そうかといって、自分たちだけでやりあえる相手ではない。 やはり思ったよりも手ごわい相手だ。 やはり弁護士に頼むしかないのか!? など、夜遅くまであれこれ話し合った。

そして、私の母の友人のある弁護士に、電話で相談してみた。

弁護士のコメントは、

「かなりまずいね。 なんでそんなにひどくなるまで放置しておいたの? 街金はねえ、弁護士でも手に負えないようなやつがゴロゴロいるんだよ。 でも、弁護士を通じて破産手続きをすれば、いくら街金でも最後には諦めるから、早く破産したほうがいい。 早速明日にでもいい弁護士を紹介するから、破産の準備をしなさい。 弁護士が介入した時点でもう取立てがこなくなるから。 このままじゃ一家共倒れだよ。 意地を張るよりも、一度破産して全てリセットしちゃったほうが、後で早く立ち直るよ。 破産に偏見を持たないで。 ちゃんと国で認められた法律なんだから利用しようよ。」

といったものだった。

監禁されて、ヨレヨレになって帰ってきた直後だったので、家族全員もう弱り果てて、「もう諦めて破産しようか・・・」という空気が漂っていた。

しかし、街金6社のうち、ほとんどの相手には、もう十分な(合法以上の)元金と利息を返している。 相手が要求している10日で1−3割の利息に満たないだけなのだ。 こんなことのために破産するのはあまりにも忍びない。 もし、何らかの方法で交渉に成功すれば、最小限の出費で和解できる可能性もあるはずだ。

そして、少し冷静になって考えてみると、調停申立てはそれなりに効果はあったので、交渉成功まであともう1歩だという気がした。 そのあと一歩とは何か!? 金だ。 6社全社が損をしないような最低限の金額を各社に少しずつ払い、同時に調停取り下げることを条件に、和解の駆け引きをすればいい。 6社全社が損をしない金額とは全部でいくらか!? 既に利息計算表はできている。 これによると、6社あわせて、約150万払えば、全社損しないどころか、法定金利プラスアルファぐらいの返済を完了したことになる。 余裕をみて200万といったところか。 手形の額面は6社で700万円になっているが、うまくいけば150万円で和解できるかもしれない。 いや、調停を申し立てたときのあの出方から見て、絶対にこれで和解してくれるはずだ。向こうだって必要以上に債務者をいじめて、不渡りを2回出させて破産させるよりも、多少の和解金をもらって、それで十分儲けが取れるなら、下手にプレッシャーをかけてリスクを冒すよりもメリットがあるはずだ。 それに、こちらは相手の会社登記も貸金業登録もその他の細かいこともすべて調べてあるわけだし、その資料は裁判所に調停を申し立てた時に裁判所に全て預けてあるので、いざとなればそのことも小出しにして駆け引きできるはずだ。

と、そんな風に冷静に考えると、はやり破産するのはもったいない。 本業の商売だって着実に売上と利益を伸ばしている。 街金以外の商工ローンやサラ金などの借金だって、解決のための対策は見えてきている。 だからもうひとふんばりしたい。

そして私は、一番やりたくなかった、最後の手段に出た。 その夜、大学時代からつきあいのある最も親しい人物に電話して、200万円貸してくれと頼んだのである。

私は友人に一通り現状を説明した。すると友人は、それ以上何も聞かずに、「明日、ウチの近くまで来てくれ。 200万円用意しておくから。」 と言ってくれた。

私は涙した。 私はこの友人の恩を一生忘れない。

この200万円で、何が何でも再起を図らねばならない。 有効に使わなくては。


一気に形勢逆転。 一日にしてマチ金6社ぜんぶ和解

翌朝9時、友人宅の近所の銀行で200万円を受け取った後、真っ先に暴力金融E社に向かった。
このとき、私は一人では行かず、父の友人に付き添ってもらった。 ひとりでは相手に言いくるめられる恐れがあるのと、第3者に証人になってもらうためである。 彼には私の横に座って何も言わなくていいと言っておいた。

E社との交渉は成功した。 私が自作した利息計算表を見せて、「あと30万円払えば元金分は払ったことになります。 これに利息をつけて返したいが、生憎昨夜徹夜で金策しても、40万しか集まりませんでした。お願いです。これで手を打ってもらえないでしょうか!? 」と頼み込んだら、しばらく考え込んで、「・・・・・わかった。 そのかわり、すぐに調停を取り下げろよ。」といって、その場で契約書を破棄して、和解書を取り交わしてくれた。 預けてある手形や印鑑証明も全部返してくれた。 ただ、このとき既に、自宅に根抵当権と賃借権を設定されてしまっていたので、これはその場で委任状を作成してもらい、後で私たちで抹消手続きできるようにしてもらった。 これでE社との縁が切れた。

次にA社。 ここは利息計算してみると、既に元金プラス法定金利を大幅に上回る金額を返済しているので、本来なら一銭も払う必要はない。 しかし、取引先あてに内容証明を送付したり、自宅に賃借権や根抵当権を設定したり、問答無用で手形を回してくるなど、かなり危険な相手なので、何としても縁を切りたかった。 そこで私は、E社と同じように、利息計算表を提示して、財布の中に10万円だけ入れて、父の友人と2人で相手の会社へ出向き、「これで勘弁してください」と頼みこんだ。 同時に、「友人がA社の都知事登録の内容を調べてくれたんですが、会社登記してませんでしたね。おかげで調停申立てに苦労しました・・・」と、それとなくA社についてとことん調べ尽くしたことを匂わせた。 その結果、A社も10万円での和解に応じ、契約書を全て目の前で破棄、手形も印鑑証明も返してくれた。

残り4社も同様の方法で、利息計算表とギリギリの現金を持参し、相手の会社を友人が調べつくしてくれたと話し、頭を下げて頼み込んで、元金プラス出資法の上限金利プラスアルファぐらいの金額になるように調整したうえで和解に成功した。

結局、6社で合計145万円払い、全て和解することができた。

このときほど、生きててよかったと思ったことはない。
また、このときほど、お金のありがたみ・友人のありがたみを感じたことはない。

家に帰り、街金6社すべて和解したことを両親に告げると、泣きながら喜んでいた。

(調停は翌日には取り下げた。 また、和解以前は都庁の貸金業課と警視庁に6社の違法貸付の事実を知らせようと思っていたが、それも思いとどまってやめた。 もうこれ以上かかわりたくない気持ちでいっぱいだったからである。 私は今でもこれらの業者を実名公表する気はない。)

* 今にして思えば、よくあれで和解できたものだと思う。 後になって次第にわかってきたことだが、何も不渡りを出さなくとも、大金を用意しなくても、もっと効率よく、この手のヤミ金融と和解できる方法はあったのだ・・・。


今度は大手商工ローンからの督促

しかし、一難去ってまた一難、である。

街金と和解したその日の夜、母が電話を受け取り、突然悲鳴をあげて泣き出した。
何が起きたのだろう!?

なんと、手形貸付の大手商工ローンA社が、うちが1回不渡りを出したことを知り、一括請求を迫ってきたのである。 しかも、全く同時刻に、連帯保証人である父の友人の職場にも一括請求の電話を入れたのである。

連帯保証人さんは借金とは無縁の大人しいサラリーマンだったので、こういったことにまるで免疫がなく、商工ローンA社に要求されるがままに、有り金100万円を持参して払いに行ってしまったのである。 それを聞いた母が号泣したのだ。

(つづく)


* ここから先をお知りになりたい方は、すみませんが、拙著 『借金なんかで死ぬな』(朝日新聞出版) をお買い求めください。
* この体験記ではヤミ金のことを「マチ金」「街金」と呼んでいますが、当時はそのような呼び方を使うほうが多かったので、あえて未修正のまま残ます。また、その他の部分も、2001年当時の原稿を修正しないままここに残します。
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