【「特定調停」 は難しいか?それとも簡単か?】

戻る

「特定調停」と書いて、「とくていちょうてい」と読む。 (特別調停とか特定調整などと間違えて呼ぶ方が非常に多いですが、しっかり覚えて下さい)

この「特定調停」は、2000年の2月から始まった比較的新しい制度で、自己破産せず借金 を返済していきたいという気持ちを持った多重債務者を中心に広く利用される。 特に今年に入ってからは、週刊誌や新刊本などで特定調停の事が大きくクローズアップ される事が増えてきた為か、全国どこの簡易裁判所でも、特定調停申立の件数が爆発的に増えている。 実際、特定調停は費用も安く、利用価値もバツグンにある。

多重債務者が特定調停を申立てると、大体次のような効果が期待できる。

1,利息制限法に引き直され、借金(元金)がその分だけ減る。 (私の著書の「体験記」にあるとおり。取引年月が長いと、かなり劇的に減ることもある。)
2,将来利息0%で、3−4年の分割払いにしてもらう事が可能。消費者金融やカード会社が相手の場合、かなりの確率でこうなる。 したがって、今まで毎月高い利息を払っていつまでも元金が減らなかったのと比べて、毎月の返済金額も減るし、返済した分だけ元金も減るので、数年後には晴れて借金を完済、借りたカネは返した事になる。債権者に極力損をさせずに、自分も再起できる訳だ。
3, 特定調停を申し立ててから調停が成立するまでの間(平均すると2−3ヶ月間)、返済を暫定的にストップしても、債権者からの取立てが来ないので、金銭的にも精神的にも非常に楽になり、今後の生活立て直しのために自分を見つめ直す事が出来る。
以上のようなメリットがある。

一方、デメリットは、以下の通り、さほど多くない。

1,信用情報機関に事故情報が5年間ほど残る。 この為、約5年間ほどは、新しくカードを作ることや住宅ローンを組む事ができにくくなる。 (但しこれはメリットとして捉えるべき。5年間というリハビリ期間のうちに、借金体質を断ち切って、貯金体質をつくり、家を買いたければ頭金を貯めればよい。5年後には事故情報はだいたい消える。)
2,調停で決まった事は裁判の判決と同等の強制力があるので、万一、調停で決まった通りに返済できなくなると、強制執行される可能性がある。
3,特定調停でも解決しないような重度の多重債務者は、調停が不成立になるか、あるいはムリして成立させてもかえって苦しい思いをすることになる。
次に、特定調停を選択する際の注意点(というか、私が常々感じていること)を挙げてみましょう。

a,特定調停を過信するな! どんな多重債務者でも特定調停で救済できるわけではない。 例えば、利息制限法に引き直して元金がその分減っても、その総額が3−4年の分割で返せないほどの大きな金額だったら、特定調停だけで再起を図るのは難しい。 この場合、法的な債務整理方法で残された選択肢は、「個人再生手続き」か「自己破産」 しかなってくる。(注:法的整理にこだわらなければ、まだあと何通りか選択肢が出てくるが、ややマニアックな方法なのでここでは省略。) いずれにしても、特定調停だけにしがみつくのは危険。広く選択肢を検討するところから始めよう。
b, 特定調停をナメるな! 確かに訴訟や個人再生などと比べればはるかに簡単に手続きでき、弁護士さんや司法書士さんに頼らず自分ひとりで十分できるが、あまりにも予備知識のないまま簡易裁判所へ行くのは良くない。最低限、特定調停関連の本を読むか、専門家に相談するか、猫次郎塾 や他の専門家のHPなどで情報収集して、予備知識を蓄えてから行ったほうがいい。
過剰に心配するな!神経質になるな! 案ずるより生むが易し。 ある程度予備知識を身に付けて、自分には特定調停が向いていると判断したら、あれこれ細かいことは心配し過ぎずに、早めに行動に移ることも大切。 でないと、いつまでたっても利息の支払いに追われ、借金(元金)がいつまでたっても減らず、何も改善されない。
c,変な情報に振り回されるな! たとえば、「過去の取引経過を証明する領収書などが残っていないと、利息制限法の引き直しは絶対にできない」とか、「弁護士を立てないと特定調停できない」とか、「調停が不調になるとすぐに強制執行される」とか、「調停するとブラックリストに載って一生社会復帰できない」とかいう話を聞くことがあるが、これらはすべてデマ情報。 振り回されないように。
d,ちょっとしたハードルがあることを知ろう。 「特定調停」はあくまで裁判所を使った「話し合い」なので、かならずしも「裁判」のようにきちっと利息制限法を主張できるとは限らない。かなり妥協させられることもある。 また分割払いや将来利息カットについても、法で義務付けられているわけではないので、100%うまくいくとは限らない。また、債権者から取引経過の明細を出し渋られることもよくある。
このように、いくつかハードルがあるのだが、どれも上手い対処法はあるので、専門家に相談すればさほど怖くない。

特定調停は決して簡単ではありませんが、特別難しくもない。 利用価値は大変高いが、決して万能ではあない。 自力で十分できるが、専門家に相談するか専門書を読むかして、自分が特定調停に 合っているかどうかや、実務上の流れや注意点などを、よく吟味しておく必要がある。 (メルマガ2003年4月より抜粋)

戻る
TOPへ