連帯保証人について (法的解釈)】

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法律上、「保証人」にはどのような種類のものがあるか?

私は法律の専門家ではないので、あまり突っ込んだ解説は控えるが、連帯保証人の問題を考える上で最低限必要な法律知識を、わかりやすい言葉で紹介したいと思う。

1.民法上の 「保証人」
意外な事に、「保証人」は、わが国の金融機関では滅多に使われていない。金融機関で使っているのは、ほとんどの場合「連帯保証人」の方。
主債務者が破産や夜逃げなどで借りたカネを返せなくなった時に、「保証人」になった人は、代わりにその返済義務を負わなければならない。 しかし、「保証人」は「連帯保証人」とは違い、かならずしも全額即座に肩代わりしなければならないとは限らない。
例えば、主債務者がまだ支払い能力がある時は、保証人は、「主債務者のほうへ請求してくれ!」と突っぱねる事ができる。これを法律用語で「催告の抗弁権」(民法452条)という。
また、主債務者に返せる能力や財産などがあることを証明する事ができれば、そこから取り立てしてくれ!と突っぱねる事できる。これを「検索の抗弁権(民法453条)という。
またもうひとつ、「分別の利益」(民法456条)といって、複数が保証人となった場合に、各保証人は主債務を平等に分割した額だけ保証すればよい事になっている。
つまり、単なる保証人ならば、1千万円の債務に対して2人の保証人がいれば、各保証人は実質的に500万円だけ保証していることになりますので、ヘンな話、保証人が多ければ多いほど、各保証人の負担は軽くなるといえる。また、保証人たちは、主債務者が明らかな返済不能にならない限り、債権者から請求される事もない。
金融機関からすれば、「保証人」だと取立ての時にちょっと厄介。なぜなら、主債務者が返済を滞った時、主債務者にきちんと督促して、その上返済能力や資産などが無いことを確認してからでないと、保証人への請求ができない訳だから。 だから金融機関は「連帯保証人」を求めるのですね。
「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」。 この3つは、連帯保証人制度を考えるうえでは是非とも知っておいてもらいたい法律用語です。

2.連帯保証人
金融機関が融資の時に求めてくる保証人というのは、まずほとんどがコレです。 保証人ではなく、連帯保証人。
連帯保証人になると、前述した「催告の抗弁権」も「検索の抗弁権」持たないとされています(民法454条)。 また、「分別の利益」も持たないとされている(民法456条)。 したがって、主債務者が返済不能であろうとなかろうと、資産をタップリ持っていようと、そんなことは関係なく、債権者は連帯保証人に全額をいつでも請求できる。 「いつでも」「全額を」、です!! これはもはや、保証人というよりは、債務者といった方が近い。
貸し手側としては、いつでも主債務者をすっ飛ばして連帯保証人に直接請求で来るので、主債務者へ返済に対する緊張感を与え続ける事ができるし、主債務者が返済を遅延した時に、いちいち主債務者の資力を調べなくても、即時に連帯保証人に全額請求できるので、債権回収する上ではメチャクチャ効果抜群。
こんなに貸し手にとって有利な制度があるのだから、もし私が金貸しだったとしても、やはり借り手に連帯保証人を求めるでしょう。 でも、借り手側としてはたまったものではない。 連帯保証人制度が人権侵害だとか前時代的だとか奴隷制度の様だとか言われるのも、うなずける。

3.身元保証人
もうひとつ、民法ではないが、雇用契約における身元保証の範囲を規定した 「身元保証ニ関スル法律」 という法律があり、これは保証範囲がかなり限定されていて、また解除も比較的しやすい制度なので、連帯保証人制度を見直す上で比較検討の材料として研究してみる価値がありそう。
身元保証人の場合は、保証期間が原則3年間、最長5年間までと定められてる。
また、被用者(雇われている当事者)が、「業務上不適任または不誠実な行跡があり、保証責任が発生する恐れがあることを知ったとき」や、「任務または任地を変更したことによって保証責任が加重または監督が困難になるとき」には、雇い主は「身元保証人」にこれを通知する義務があり、身元保証人はこのような事実を知って負担が重いと判断した時には身元保証契約を解除できるとしています。 また、報告を受けなかった場合、報告義務違反として、保証範囲の負担を軽くする事もできる。 連帯保証人とは大きな違いだ。

いかがでしょうか?
私が思うに、一番問題視しなければならないことは、まず「連帯保証人」という制度の存在そのもの。 次に、その「連帯保証人」という制度を、日本全国のあらゆる債権者(銀行、ノンバンク、街金、家主、はては一般個人まで)が利用しているという事。 「連帯保証人」を「保証人」にするだけでも、自殺者は激減すると思う。 是非とも連帯保証人制度を撤廃、または撤廃が難しいなら、せめて見直しぐらいしてもらいたい。(メルマガ2003年9月 メルマガ61号より抜粋)

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