私はE社での出来事を家族と友人に報告した。 長時間監禁されたこと、お茶をかけられ、土下座させられたこと、今夜にも自宅に占拠屋が押し寄せてくる可能性があること、親戚や友人に金を借りに行かされそうになったこと・・・。
そして、明日には家族が何をされるかわからないこと。
同席していた友人はすぐに警察に行った方がいいと言った。 しかし、警察はまるで相手にしてくれないどころか、「金を借りて返せないあんたたちが悪い」という態度だ。
まるで頼りにならない。 そうかといって、自分たちだけでやりあえる相手ではない。 やはり思ったよりも手ごわい相手だ。 やはり弁護士に頼むしかないのか!?
など、夜遅くまであれこれ話し合った。
そして、私の母の友人のある弁護士に、電話で相談してみた。
弁護士のコメントは、
「かなりまずいね。 なんでそんなにひどくなるまで放置しておいたの? 街金はねえ、弁護士でも手に負えないようなやつがゴロゴロいるんだよ。 でも、弁護士を通じて破産手続きをすれば、いくら街金でも最後には諦めるから、早く破産したほうがいい。
早速明日にでもいい弁護士を紹介するから、破産の準備をしなさい。 弁護士が介入した時点でもう取立てがこなくなるから。 このままじゃ一家共倒れだよ。 意地を張るよりも、一度破産して全てリセットしちゃったほうが、後で早く立ち直るよ。
破産に偏見を持たないで。 ちゃんと国で認められた法律なんだから利用しようよ。」
といったものだった。
監禁されて、ヨレヨレになって帰ってきた直後だったので、家族全員もう弱り果てて、「もう諦めて破産しようか・・・」という空気が漂っていた。
しかし、街金6社のうち、ほとんどの相手には、もう十分な(合法以上の)元金と利息を返している。 相手が要求している10日で1−3割の利息に満たないだけなのだ。
こんなことのために破産するのはあまりにも忍びない。 もし、何らかの方法で交渉に成功すれば、最小限の出費で和解できる可能性もあるはずだ。
そして、少し冷静になって考えてみると、調停申立てはそれなりに効果はあったので、交渉成功まであともう1歩だという気がした。 そのあと一歩とは何か!? 金だ。
6社全社が損をしないような最低限の金額を各社に少しずつ払い、同時に調停取り下げることを条件に、和解の駆け引きをすればいい。 6社全社が損をしない金額とは全部でいくらか!?
既に利息計算表はできている。 これによると、6社あわせて、約150万払えば、全社損しないどころか、法定金利プラスアルファぐらいの返済を完了したことになる。
余裕をみて200万といったところか。 手形の額面は6社で700万円になっているが、うまくいけば150万円で和解できるかもしれない。 いや、調停を申し立てたときのあの出方から見て、絶対にこれで和解してくれるはずだ。向こうだって必要以上に債務者をいじめて、不渡りを2回出させて破産させるよりも、多少の和解金をもらって、それで十分儲けが取れるなら、下手にプレッシャーをかけてリスクを冒すよりもメリットがあるはずだ。
それに、こちらは相手の会社登記も貸金業登録もその他の細かいこともすべて調べてあるわけだし、その資料は裁判所に調停を申し立てた時に裁判所に全て預けてあるので、いざとなればそのことも小出しにして駆け引きできるはずだ。
と、そんな風に冷静に考えると、はやり破産するのはもったいない。 本業の商売だって着実に売上と利益を伸ばしている。 街金以外の商工ローンやサラ金などの借金だって、解決のための対策は見えてきている。
だからもうひとふんばりしたい。
そして私は、一番やりたくなかった、最後の手段に出た。 その夜、大学時代からつきあいのある最も親しい人物に電話して、200万円貸してくれと頼んだのである。
私は友人に一通り現状を説明した。すると友人は、それ以上何も聞かずに、「明日、ウチの近くまで来てくれ。 200万円用意しておくから。」 と言ってくれた。
私は涙した。 私はこの友人の恩を一生忘れない。
この200万円で、何が何でも再起を図らねばならない。 有効に使わなくては。
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