【連帯保証人について (2001年メルマガより抜粋)】

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連帯保証人については、私自身、誰よりも痛い目に遭っているので、そりゃもう言いたいことがたくさんある。(笑)
今回は、前編として、連帯保証人制度というのがいかにヘンな制度なのか、思うところを書きます。
既に皆さんご存知と思うが、中小零細企業の事業主が銀行に融資を申し込むと、当たり前のように、社長個人の連帯保証を求められる。 また、条件によっては、第3者の連帯保証人(友人、親戚など)を要求される事もザラ。 もっとひどい場合は、自宅に根抵当権を設定し、さらに複数名の連帯保証人を立てさせられる場合がある。 これは商工ローンがよくやる手口で、都市銀行でも、零細企業向けのプロパー融資の場合はよくやっている事。 (大企業には連帯保証人なんて求めないのに、不公平)

連帯保証人になると、万一、主債務者が返済不能に陥った時、その債務を肩代わりしなければいけない。
例えば会社が経営不振に陥り、銀行への返済が滞った場合、連帯保証人になっている個人の所へ督促が行く。 例えの連帯保証人が、年金生活者の老人であっても、他社に勤務しているサラリ−マンであっても、そんなことは関係ない。 とにかく問答無用で、連帯して責務を負わなければならない。

会社を簡単に潰せない理由はここにある。
会社を潰すと、連帯保証している個人にも大迷惑がかかってしまう。 この為、「儲からない会社にさっさと見切りをつけて、早く次の新しい事業を起こして敗者復活しよう」という、スクラップ&ビルド的な前向き・建設的な発想になれないの。
この連帯保証人制度、日本では銀行でもノンバンクでも、賃貸住宅や就職でも、ごく当たり前のように行われていて、それに対して誰も何も不思議に思っていない様だが、世界的にみると、これは非常に奇妙な制度である様だ。 欧米人に日本の連帯保証人制度を説明しても、なかなか理解してもらえない。

では、他国ではどうだろう?
まず、アメリカを例にあげると、アメリカでは連帯保証人制度というのは存在しない。 金融機関からお金を借りる場合、多くの場合「担保」を取られますが、連帯保証人は不要。唯一、連帯保証人に近いのが、無担保ローン(教育ローンや高額の短期キャッシング) を借りる時に、"co-signer" (直訳すると共同署名者)というのを要求される場合があるが、これも何もかも連帯責任というわけではなく、いろいろ限定条件のようなものが付いていて、言わば「ただの身元保証人」の様なもの。 (注:これを書いていた2001年当時は私もまだまだ勉強不足でした。その後の調べで、アメリカにも個人保証をつける習慣があることがわかった。しかし、その場合も、「連帯」保証人ではない。ただの保証人であり、保証の範囲も限定されている。 日本の連帯保証人とソックリな制度は、やはりどこを探してもない。)
アメリカでは連帯保証人がない代わりに、担保のつけ方が非常に合理的で充実している。 例えば、担保の対象は不動産や有価証券だけでなく、売掛金や商品在庫までもが担保の対象になる。 そして、もし借り手(Borrower)が返済不能になると、担保を渡して借金はチャラになる。例え不動産担保の評価額が下落して元本割れを起こしても、それは銀行側の自己責任と割り切って、それ以上請求してこない。担保を処理して終わり。(こういうのをノンリコースという) それだけアメリカの銀行は、自分の審査能力や担保の査定能力に自信とプライドを持っているともいえる。
ちょうど日本の質屋に似ています。 質屋は自分の査定にプライドを持っているので、後から「この質草だけじゃ足りない。もっとよこせ」などとは言いませんよね。それと同じ。
一方、日本の銀行は、返済不能時には担保を差し押さえて、それでも足りないと、さらに連帯保証人の個人資産まで取ろうとする。 まるでそれが当たり前の様に。(質屋よりも往生際が悪い) また、商工ローンにいたっては、ただでさえハイリスクを名目にとんでもない高い利息を取っているにもかかわらず、複数の連帯保証人と不動産の根抵当権を求めてくる。 ここまでくると、もはやリスクがどうのこうのという範囲を超えている。 これはまるで、奴隷契約。
これは世界的に見ても特殊であるばかりでなく、日本の銀行の審査能力のなさ、自己責任能力のなさ、プライドや倫理観のなさを顕著にあらわしているように思えます。 もっとも、悪いのは銀行だけではなく、それを当たり前のように認めている法律や政治にも大きな問題があると思いますが。
連帯保証人制度によってメリットを享受できるのは、貸し手側だけ。 借り手側は、連帯保証人になって泣くことはあっても、笑えることはひとつもない。不公平だと思いませんか?
まったく人をバカにした制度だ。 本来、株式会社や有限会社の経営者は、「有限責任」といって、万一事業に失敗しても、会社につぎ込んだ資金を失えばそれでオシマイのはず。 それを、個人に責任転嫁して、執拗に責任追及するのが現在の日本の連帯保証人制度。 まるで江戸時代の封建制度そのまま。 株式会社という制度の本来のあり方と、大いに矛盾している。

連帯保証人制度がもたらす悪影響は、中小零細事業主だけに及びません。 なぜかあまり話題にのぼることはありませんが、日本経済にも深刻な悪影響を及ぼしている。
たとえば、連帯保証人制度のしがらみのせいで、非常に多くの事業主が、潰すべき会社を潰すこともできないで深刻に悩んでいる。 借金自殺する経営者も、多くは連帯保証人がらみの悩みからきている。 また、金融機関の不良債権処理が進まないのも、担保処理だけでスッキリさせず、いつまでもウダウダと連帯保証人への追及を続けているせいだとも言える。(白黒はっきりしないグレーな不良債権が多いのもこの為)

要するに、連帯保証人制度のせいで企業家はスクラップ&ビルドが思うようにできない。 金融機関は不良債権処理が進まない。 これらが、日本経済を停滞させ、成長を大きく妨げている。 言い換えれば、連帯保証人制度を廃止すれば、不採算事業から退くことも新規事業を起こすことも楽にできる様になるので、起業&廃業の新陳代謝が活発になり、有望な起業家が沢山育ち、金融機関の構造改革も進み、日本経済は底から湧きあがるように活性化されていくはず。

それから、話がちょっとそれますが、アメリカでは賃貸住宅を借りるときにも連帯保証人なんてない。礼金敷金もない。普通は家賃の前払い(1か月分)と、Cleaning Deposit といわれる、撤去時の清掃代金の前受け金を取るだけ。 しかも、このCleaning Deposit は、退去時に余った分を返してくれる。 アメリカでは、これらの前受金が担保代わりになっている。

一方、日本では、礼金敷金を取って、さらに連帯保証人まで要求してきます。 これはどう見ても異常。 礼敷金を取っている以上、3−4ヶ月は家賃滞納しても大家さんは損しません。 部屋の中が汚されたり壊されたりしても、敷金でまかなえる。 なのに連帯保証人を取るとは一体どういうことでしょう? まったく人をバカにしている。 まるで子供や禁治産者のような扱いだと思いませんか?(メルマガ 2001年/第19号より抜粋)

注: これを読んで、「いや、連帯保証人制度は日本経済のために必要だ」 という反論がある方や、「海外で連帯保証人制度のある国を知っている」 とか 「○○国では連帯保証人を取るかわりにこうやって銀行融資している」 という情報をお持ちの方、 あるいは 「日本から連帯保証人制度を無くすにはこうしたらいい」 というようなご意見をお持ちの方、何でもかまいませんので、どしどしメールください。 今後、このHPで、連帯保証人の話題を特に充実させていきたいので、あらゆる角度でのご意見を広く募集し、ホームページに反映させていきたいと思います。 皆様ご協力お願い致します。

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